歌ヶ丘

07/4/8「うろん野原」追加


朝未き地平の上へ惑い出て詩を掻き食らう鬼の眷属



 いくさばの灯 

風がやむ土の上にて幾千の鎧兜が揃うは悲し

天頂に太陽かかる地上には影も激しき若人ひとり

がむしゃらな刃ばかりが煌めいてどこにも興味をひくものはなし

鮮血の色を忘れて過ごせども炎のごとき人も彼の色

静かなる川の水面が赤々と肩叩かれて震える夕べ


 漆黒蟷螂 

草露が落ちて濡れたる蟷螂は禊ぎのためか ひそんでいる

彷徨える蟷螂ついに死地を得る縁側からでは手が届かない


 闇烏 

くらやみの樹上に姿隠すのも朝に向かうも同じ烏か?


 つむじ風 

しんしんと張りたる水はなだらかに三月の夜の戦支度

雨雲を掻き分け西日凄みゆく水滴も我も戸惑ゐけるほど

月光り輪郭作る生物はみな大人しき紺の幽霊


 夏草群 

石ならば後に残るが卒塔婆なら朽ちる どちらも今は叢(くさむら)

話しつつ沈黙すなり其の瞳明日のことなど気に病むなかれ

薄茶色うごめく躯に青痣のごとき模様 蛹は蝶へ

歌おうとすればするほど外れゆく雲雀は憎し空の青さえ

やいば持ち突き立て柱傷つけど懊悩せる手笑う赤鳥居


 風説生業 

懐の紙切れが国動かさむはらわた抜かれ人らは軽し

音立てて蕎麦を啜れり眼前の秘文書の文字まだ濡れており

あかときの鳥が開けし異境の蓋 暗きを眺め続けるも飽く


 明けの合戦 

赤きもの白きものらと交わりて桃色にならぬものは正しい

一杯の湯飲みの海も大海を知る者ならば青く見えるか

冬を待ち夏は乞いても今は秋 待たれることなく過ぎゆくが秋


 草絶えず 

見えぬ目で何を語るか針穴を通せど景色変わらぬなどと

染みを付け視線を外す袖の先 数秒後には淡き紋様

草花と元を正せば同じでも彼らは彼らのやり方がある

水に波 心に繁る草を刈る手を休めては見る影芝居



 うろん野原 

厚き雲 風雨に荒れし眼下には流れたゆたう百歳の国

薄の穂刈りたる槍と舞い交わしはためく裾に猛禽の影

水音を追えば雪へと変わる道 足跡黒き帰るなら「今」

どこまでも尽きぬ墨なら筆先で音無き声も写せるものを

夜明けにも湖はまだ波打たず虚像は凍る寝ても覚めても



整のいた言葉の罪を悔やむなどしらじらしきこと三十一字














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