killer7




コヨーテがひたすら悪趣味。女性向けではなく単なる暇つぶし話。若干グロめなので苦手な方は回避で。

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ペーパーウェイトのある光景



天井が低い上に空気も停滞気味の辛気くさい廊下を歩いていると、目の前に見える扉の一つがゆっくりと開いた。
コヨーテはその扉に向かって走りながら禁煙の表示板で吸っていた煙草をもみ消す。
開きかけた扉を蹴りつけると部屋の中へ踏み込み、右手に見えた人影に2発、目の前の人物が手を挙げるのを見てその左足と二の腕に1発ずつ撃ちこむ。
額と左の鎖骨あたりを撃たれた人物が倒れて動かなくなるのを確認してから、コヨーテは目の前の男に近づいた。 腰が抜けたように座りこんだ男は引きつった笑いに似た表情でコヨーテを見上げると、腕を押さえながら後ずさりする。
痩せぎすの褪せた赤い髪をした男で、安っぽさを全身で体現している。

「あんた、どこの犬だ。うちのボスを狙いに来たのか」
コヨーテの銃を気にしながら、虚勢を張った声を出す。

「それを聞いてどうするんだ?誰かに売るか?ここまできて金儲けもなにも、もうないんじゃねぇか?あんたはさっさと居場所を教えてくれればそれでいいんだよ。なぁ?」

コヨーテはしゃがみ込むと男の目を見る。
右手で弄ぶ銃がカチ、カチ、と時計のように鳴っている。
この男のカウントダウンはすでに始まっているが、本人はそれを理解しているのだろうか。

「それにしてもなんつーか。最低だな」
「…なにがだ」
男の怯えた表情がコヨーテの顔に笑みを浮かばせる。
「この場所も人材もさ」
「だったら、俺みてえな下っ端に構ってないでさっさと行ってくれ。ボスなら2つ上の階の一番奥の部屋だ。なぁ、もういいだろ?」
「おいおい、暇つぶしにもならねぇな」

銃身で男の頬を軽く叩きながら、コヨーテは呆れたように笑う。

「用がないなら消えてくれ。頼むよ」
「確かに、その方が無難だな」

男の懇願に素直に頷きながら立ち上がると、当然のようにその左手を踏みつける。
残念ながら、当たり前の感情は人生の始めから不携帯だ。
残っているのはこれまた実直な防衛本能と、下卑た楽しみ。
それ以上もそれ以下も望まない。質素なものだ。

「悪いけどよ、その前にちょっとつきあってくれ。仕事人間は女にモテねぇと相場が決まってるからな」

親しげな言葉を口にしながら、足にかける力を増して笑う。
指の骨が折れる鈍い音と同時に悲鳴が上がるが、その響きがあまり良くない。
やはり最低の人材だ。
コヨーテは一端足を離すとデスクの上にあったナイフをとり、それを手の中で器用に回しながら再び男に近づく。

「良いナイフだな。あんたのか?」

切っ先を男の目に近づけてゆらゆら振りながら笑いかける。

「安心しろよ。その役にたたねぇ足が、愛想つかして体からおさらばするところなんて見ないですむようにしてやるから」

自分の顔を映した金属を見る男の顔が面白いほど引きつった。
これは特別悪くもない反応だ。



ダンが目を開けると、モデルのように無表情な灰色の壁が視界に入る。
盗人が珍しく自分から交代してきたが、奴もこんなところではつまらなすぎて死んだほうがマシだとでも思ったのだろう。

視線を床に向けると、2つの死体が転がっている。
その周りにはわざとらしく零されたような血の池が出来ていて、危うく靴を濡らすところだった。
窓に近い方の死体には手首と足首から先が見あたらない。
迷子にでもなっているのもしれないが帰ってきても主はすでに旅だった後だ。
ただし目のあった場所も暗いだけの空洞になっているので、主の方も地獄で道に迷っているかも知れないが。

唯一家具らしい形をした灰色のデスクに目を向けると、その上に迷子の右手がいた。
手首の断面を下にして置かれた手は、ご丁寧に中指まで立てている。
と思ったが、それは他の指が無かったせいでそう見えただけだ。
センスが無い。
血で殴り書きされた紙がその下に挟まっていて、どうやらそれが的の居場所らしい。
メッセージの最後には、わざわざいびつなハートマークまで書かれている。
指輪が填ったままの粗悪なペーパーウェイトが哀れを誘う。

残酷さもその底をぶち抜いてしまえばただの滑稽だ。
ならばどうするか?
聞くまでもない。
間違いなく史上で最も趣味の悪い遊戯の真っ直中では、この程度の悪ふざけは暇つぶしにもならない。

麻痺するほどの血の臭いが目の前の光景すら凌駕する場所では、あらゆる基準が消滅する。
だがここではないどこか、例えば白亜の豪邸のプールサイドだとしても、何も変わりはない。
役者が揃えばまた右手が踊り、殺したり死んだりする。

背後の扉には指が折れた左手がノブを無理矢理掴んでぶら下がっている。
裸電球の照明に照らされたその影が、低い笑いを零す背中に合わせてゆっくりと揺れている。







蛇足
お前にセンスどうこう言われたくねーよとコヨーテが思ってるだろうことはさておき。 品位もクソもなく残忍なコヨーテってのが書きたかったんです…。もっとハジけたらいいよ。悪趣味万歳。
次に呼ばれるのは楓にしようかと思ったんですがあのひと無反応そうだから。紙を一目見て「…バカ?」で終わりますよね。 暴君は口うるさいので(今回しゃべってないけど)話は進めやすい。そんな基準?

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