2月の甘休日(2)

バンが振り返ると同時にデカルームの扉が開く。

「先輩、今日ってバレンタインデーだったんですね。本部生活が長かったのですっかり忘れてましたよ」
そう言いながら入ってきたテツは、両手で抱えるようにしていたものをデスクの上にバラバラと置く。その周りにみんなが集まってきた。センが一つを手に取る。
「うわ、なんか高そうなチョコじゃない?これ」
「あー!これってジャン・ポール・エヴァンじゃない!こっちはゴディバ、これはピエール・マルコリーニ!他にも…うん、ブランドものが多いみたい。テツすごーい!」
ホージーが呆れたように頭を振る。
「ウメコ、その記憶力をもう少し捜査にも使ってくれないか」
「高級なのはいいことだ」
「テツやるねぇ。これ、相手の子たちは本気かもしれないよ」
センの言葉に、テツが目をしばたたかせる。
「そうなんですか?でも、これをくれたのっておばさ・・・ゴホ、失礼。えーと、かなり年上の方ばっかりなんですよね…」
「グレイト。マダム・キラーはテツのほうだったな」
「それに俺、甘いものはあんまり好きじゃないんですよ。困ったなぁ」
その言葉に、バンががばっと立ち上がる。
「おいテツ!お前後輩のくせに生意気だ!」
「えっ、ちょ、ちょっと先輩!なんですか急に〜!?うわ!!」
テツの言葉が終わらないうちにバンがテツにプロレス技をかけようと襲いかかり、テツがそれをかろうじてよける。
「んん?バンどうかしたの?」
センの質問に、呆れて口をあけていたウメコが答える。
「マイラさんから、チョコ貰えなかったんだって」
「ああ、なるほどねぇ」

ばたばたと走り回るバンとテツの後ろでホージーは仕事に戻り、ウメコは嬉しそうにテツのチョコを物色しはじめる。

「テツが食べないなら、これ、私がもらっていいかなぁ」
「あんまり食べると鼻血ブーよ。私にも少し残しておいておくんなまし」
「おーいバン、やつあたりはよくないよ・・・って聞こえてないね」

バンがテツに掴みかかったところで、ボスがデカルームに入ってきた。

「いったい何の騒ぎだ」
ボスが次の言葉を継ぐ前に、ウメコが勢い込んでボスに迫る。
「ボス、今年はチョコどうでした?」
「ああ、まあいつもと同じだな・・・。送り先は例年通り指定しておいた」
「送り先?例年通り?」
テツにヘッドロックをかけようとしているバンが怪訝そうな顔をする。ジャスミンと一緒に煎餅を食べ始めたセンが説明した。
「毎年ボス宛のチョコは全部まとめて、小さい子供のいる施設に届けているんだよ」
「数がありすぎて、みんなで分けても無駄になっちゃうんだもんね」
「うわ、さっすがボス!そんなにもらえるなんてすげーなぁ!!」
テツへの怒りも忘れたバンが、素直に感嘆の声をあげる。テツがその隙にジャスミンの後ろに逃げた。
「だから言ったでしょ?ボスには誰も敵わないわ」
ジャスミンがなぜか勝ち誇った顔で全員を見回した。センが大げさな口調でおみそれしました、と返し、バンに負けず劣らず素直な後輩は感心しきった顔をして頷く。
「マーベラス。人気というステータスも地域貢献になるんですね。勉強になります」
「ボスは特別だ。普通は参考にならないぞテツ」
「あれ?相棒、もしかして負け惜しみ〜?」
「誰がだ!だいたいお前は、俺に負けてるだろ。それと相棒っていうな!」
「なんだよ、やっぱ勝ち負け気にしてんじゃん!」
すでにライフワークとなった応酬を始める二人を完全に無視し、ジャスミンが給湯室に向かう。
「私、みんなの飲み物入れてくる。今日のおやつはチョコだから、甘くない飲み物が良いかしら?」
「ジャスミン甘いなぁ。甘いものにも甘いものが一番だよ?私はココアがいいな〜」
ウメコもジャスミンの後についてデカルームを出ていった。
「ウメコさんの味覚だけは、僕にも未だに理解できません」
テツがまじめな口調で呟いて首を振る。センは全員のやりとりを笑顔で眺めながら、なかば諦めた顔をしているボスに小箱を差し出す。
「あ、ボス、これ健康に良いチョコらしいんですけど、お一つかがですか?」
「ああ、ありがと・・・う・・・?なんだか異様な匂いが・・・・・・」

箱に鼻先を近づけたボスは「ぎゃわん」と悲痛な鳴き声をあげ、鼻を押さえてのけぞった。 その後3日間、ボスが鼻声だったことは言うまでもない。




ボスの鼻が人より(たぶん)良く利くことを忘れてはいけません。 センちゃんは始末書。 あれ?警察官って市民から物もらっていいんだっけ?まぁいいか…。 ていうか無駄に長い!すいません。


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